輸出先としてのASEAN諸国

海外進出を考えた際、進出先国の候補としてASEAN諸国を考える企業は多いと思います。

①距離的に日本から近い、②文化的に日本に親しみがある国が多い、③成長性が大きく期待される、等のメリットが期待できます。

アジア開発銀行(ADB)によれば、東南アジアのGDP成長は2023年に4.7%とされており、インドを擁する南アジアに次いで2番目の成長率です。

内閣府発表の日本の2023年の名目GDP成長率は2.1%という予測なので、日本の2倍以上のスピードで成長しています。

同じ東アジアの日本と韓国が全く違う国であるように、ひと口にASEANと言ってもそれぞれのお国事情や国民の性質は全く違います。

本記事ではそんなASEANを輸出先として検討するための判断材料をご提供します。

各国の情報は、それぞれ別の記事でご紹介して行きますので、ぜひそちらご参照下さい。

基本的な進出先国の選定方法について知りたい方は『進出先国の選び方』もご参照下さい。

1. ASEAN諸国の基本市場の比較

下表は各国の名目GDPとその成長度合、および人口をまとめたものです。

IMF – World Economic Outlook Databases (2023年4月版) および 外務省アジア大洋州局地域政策参事官室 『目で見るASEAN 』(令和4年9月 )から作成。

まず、上位6か国とそれ以外の国の国でGDPの差が開いている事が目に入ります。

はじめての進出の場合は、特別な理由が無い限り市場の大きさを重視して上位6か国から進出先を選ぶ方が良いでしょう。

2. 特にチェックするべき2か国

ASEANのGDP上位6か国を眺めると、特に特徴がある国が2か国あります。

まずはインドネシア

GDP、人口共に他の国とは群を抜いて大きく、魅力的な市場です。

インドネシアは人口が多く、85%以上がイスラム教徒ですので、市場進出の際にはハラル認証の必要度合を推し測ることが必要です。

一方で、富裕層には華僑が多いのも特徴で、超高級な商材を扱う場合等は考慮しても良いでしょう。

2つ目に目立つ国はシンガポールで、GDP年平均成長率の予測がマイナス成長になっています。

ASEANの中で唯一の先進国であるこの国は、人口も国土も小さいものの、東南アジアの経済・文化のハブです。

近隣諸国のバイヤーは、シンガポールの展示会に足を運んでいたり市場を観察していたりすることも多く、この国に進出することの意義は単に売上を上げる事以上の価値があるでしょう。

また、シンガポールは親日国としても屈指の国です。

シンガポールでは、旅行に行きたい国として日本はNo.1です。日本食レストランも多く進出していて、お寿司やラーメンだけでなく、うなぎ等のお店もあります。

高所得者が多く物価も高いこの国は、輸出にかかった物流コストも吸収してくれる購買力も期待できます。

3. ASEAN市場を選ぶうえで特に注意すべきポイント

このように、各国で事情の異なるASEAN。

他にも以下のようなポイントに留意して、比較検討すると良いでしょう。

1. 文化と消費者の好み

ASEAN諸国は文化的に多様であり、食習慣や美容観念も異なります。進出する国や地域ごとに消費者の好みやニーズを理解し、現地の文化に合わせた商品開発やマーケティングを行うことが重要です。たとえば、食品分野では辛味や香辛料の好みが異なることがあり、化粧品分野では肌の色やトーンに関する要素が重要となる場合があります。

2.規制と法的要件

ASEAN諸国は個別に異なる法規制や規制環境を持っています。製品の安全性、成分表示、ラベリング規定、許可や認証の取得などが重要な要素となります。各国の法的要件を遵守し、現地の規制機関との連携を図ることが必要です。また、現地の代理店や法務専門家のサポートを受けることも推奨されます。

3. 流通・物流の課題

多くのASEAN諸国は物流や流通の課題が存在します。輸送手段や倉庫施設、配送ネットワークの整備状況などを評価し、物流パートナーとの協力体制を構築することが重要です。また、温度管理や製品の鮮度維持にも留意し、品質管理を徹底することが求められます。

4. 偽造品や知的財産権の保護

ASEAN市場では偽造品や知的財産権の侵害が懸念される場合があります。特に化粧品分野では、ブランドの信頼性や製品の品質を守るために、知的財産権の保護策を講じることが重要です。適切な知的財産権の登録や監視、現地の法的措置に関する情報を把握することで、自社のブランド価値を守ることができます。

以上、いかがでしたでしょうか。

上記のポイントはあくまで一般的な物であり、各企業によって自社の強みや、進出の背景、等々により取るべき方法は千差万別です。

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